このページの要点
- 総入れ歯の安定が悪いとき、入れ歯を数本のインプラントで支える方法があります。本数は日本口腔インプラント学会の指針を目安に決め、当院では上あご6本・下あご4本を基本にしています。
- 骨の量や形によっては、本数を増やしたり、骨を増やす処置が必要になることがあります。
- 外科手術が必要で、自由診療です。日々のお手入れと定期的なメインテナンスが欠かせません。すべての方に同じ経過をお約束するものではありません。
※ このページでは、一般的な方法として「上あご6本・下あご4本」を基本にご説明します。実際の本数は、CTで骨の状態を確認したうえで決まります。
総入れ歯のお悩み
よくうかがう声
総入れ歯は、歯を全部失ったときに、歯ぐきとあごの骨の上に載せて使う入れ歯です。費用を抑えられ、歯を削る必要がないという利点がある一方で、次のようなお悩みがよく挙がります。
- 食事のたびに外れる:話したり笑ったりしたときに、ずれたり外れたりする。
- 硬いものが噛めない:噛む力が弱く、食べられるものが限られる。
- 歯ぐきが痛い:擦れて口内炎になる。合わなくなって調整を繰り返す。
- 見た目が気になる:入れ歯と分かる感じがして、人前で笑いにくい。
- においが気になる:清掃が届きにくく、汚れが残りやすい。
- あごの骨がやせてきた:入れ歯が当たることで、少しずつ骨が減っていく。
こうしたお悩みは、入れ歯の作り直しや調整である程度やわらぐこともあります。まずは、今の入れ歯が合っているかを確認することから始めます。そのうえで、別の方法も知りたいという場合に、インプラントで支える方法をご説明します。
インプラントで支える方法
入れ歯を、骨に埋め込んだインプラントで支えます
歯ぐきの上に載せていた総入れ歯を、あごの骨に埋め込んだ数本のインプラントで支える方法です。入れ歯が動きにくくなるため、噛む力や話しやすさの改善が期待できます。取り外して清掃するタイプと、ねじで固定して取り外さないタイプがあります。
2つのタイプ
取り外せるタイプ
- しくみ
- インプラントの上に、入れ歯を着脱できるように留めます。
- 清掃
- 入れ歯を外して洗えるので、手入れがしやすい。
- 費用
- 固定式より抑えられることが多い。
- 注意点
- 留め具の部分がゆるむことがあり、定期的な調整が必要。
固定するタイプ
- しくみ
- インプラントに連結した歯を、ねじで固定します。
- 清掃
- 取り外せないので、専用の器具で清掃します。
- 費用
- 取り外せるタイプより高くなることが多い。
- 注意点
- 清掃が届きにくいところがあり、メインテナンスが重要。
※ どちらが合うかは、骨の状態、噛み合わせ、清掃のしやすさ、ご希望によって変わります。検査のあとにご説明します。
本数と部位の考え方
日本口腔インプラント学会の指針をもとに設計します
全部の歯を入れ替える場合、1本ずつ同じ数だけインプラントを入れるわけではありません。限られた数のインプラントで、入れ歯全体を支える設計にします。本数は経験や好みではなく、日本口腔インプラント学会の指針(上部構造の設計とその成績)で示されている範囲を目安に、骨の状態と噛み合わせを見て決めます。
| 部位/上部構造 | 指針の本数 | 当院の基本 |
|---|---|---|
| 上あご奥歯まで修復する固定性ブリッジ | 4〜6本以上 | 6本 |
| 上あご取り外せるタイプ(オーバーデンチャー) | 4〜6本以上 | 6本 |
| 下あご奥歯まで修復する固定性ブリッジ | 4〜6本以上 | 4本 |
| 下あご取り外せるタイプ(オーバーデンチャー) | 2本以上 | 4本 |
※ 下あごの取り外せるタイプは、指針では2本以上とされています(1本でも良好な報告はありますが、長期のデータは不足しています)。
※ 指針の本数は「これ以上」という下限の目安です。実際の本数は、骨の量・形、噛む力、上部構造の種類によって変わります。
本数を決めるときに見ていること
指針では、本数だけでなく、配置とつなぎ方も重要とされています。当院でも次の点を踏まえて設計します。
- 前後方向に広く、多角的に配置する:まっすぐ一列に並べるより、前後に振り分けたほうが安定しやすい。
- 連結する:連結したほうが、長期的な成績が良いとされている。
- 張り出し(カンチレバー)は1歯分まで:支えの外側に長く張り出すと、負担が集中しやすい。
- 上部構造に十分な硬さを持たせる:土台がしなると、ねじのゆるみや破損につながる。
- 回転を許容するタイプは避ける:取り外せるタイプでも、回転する構造は避ける。
- 本数は多いほうが、長期の合併症に対応しやすい:あとから1本がだめになっても、残りで支えられる余裕が生まれる。
当院が上あご6本・下あご4本を基本にしている理由
いずれも、指針で示される本数の範囲に収まる数です。そのうえで、次のように考えています。
- 上あごは6本:骨が柔らかく、上顎洞(奥の空洞)が近いため、余裕をみて支えを多くします。指針でも、上あごは4〜6本以上とされています。
- 下あごは4本:骨が硬く、広い範囲で支えられるため、4本で設計できることが多いです。取り外せるタイプでは2本以上で足りるとされていますが、当院では長期の経過を見据えて4本を基本にしています。
本数が変わることもあります
骨の量や硬さ、上顎洞までの距離、噛む力、上部構造の種類によって、本数を増やしたり位置を変えたりします。骨が足りない場合は、骨を増やす処置を組み合わせることがあります。
- 骨の幅や高さが足りない → 骨を増やす処置(GBR法など)
- 上あごの奥の骨が薄い → 上顎洞底挙上術を組み合わせる
- 噛む力が強い方 → 本数を増やす、または固定式にする
※ 指針はあくまで目安です。最終的な本数と配置は、CTで骨の状態を確認したうえで、治療計画書でご説明します。
比べてみる
総入れ歯と、インプラントで支える入れ歯
総入れ歯
- 費用の目安
- 保険診療のものと自由診療のものがある
- 治療の期間
- 数回の通院
- 手術
- 不要
- 取り外し
- 毎日外して清掃する
- 注意点
- 動きやすく、噛む力は弱い。歯ぐきの痛みや、骨がやせることがある。
インプラントで支える
- 費用の目安
- 自由診療(下記の費用の例をご覧ください)
- 治療の期間
- 数か月〜(骨の状態による)
- 手術
- 必要(局所麻酔)
- 取り外し
- 取り外せるタイプと固定式がある
- 注意点
- 外科手術が必要。清掃と定期的なメインテナンスが欠かせない。
費用と期間
すべて税込・自由診療
費用は、片あごか両あごか、本数、取り外せるタイプか固定するタイプか、骨を増やす処置が必要かによって変わります。検査のあとに、総額を治療計画書でお示しします。下の表は、そのうち金額が決まっているものと、変わりうるものを整理したものです。
| 内容 | 費用(税込) |
|---|---|
| CT撮影・診断料 | 33,000円 |
| 本数と部位に応じた費用下あご4本/上あご6本など。取り外せるタイプと固定するタイプで異なります | 検査のあとに 治療計画書でお示しします |
| 骨を増やす処置が必要な場合 | GBR法 66,000〜110,000円 上顎洞底挙上術 165,000円〜 |
| 保証料ガイドデント社・最長10年 | 1本22,000円 ポンティック16,500円 |
※ 治療内容・期間・費用は患者様おひとりずつ異なります。必要な処置と最終的な費用は、検査・診断のあとに治療計画書でお示しします。費用はステップごとのお支払いです。
期間の目安
- 検査・診断:1〜2回の通院
- 手術:1回(片あごずつ行う場合は2回)
- 仮の歯をお入れしてから、最終的な歯に替えるまで:数か月(骨の状態による)
- 骨を増やす処置を行った場合:さらに数か月
※ 骨と結合するまでの期間や、仮の歯を使う期間は、骨の状態や部位によって変わります。条件が合う場合は、手術の当日から仮の歯を使えることがあります。
リスクと注意点
事前にご説明します
手術を伴う治療です。次のようなリスクがあります。
- 手術直後:腫れ、痛み、内出血、出血が生じることがあります。
- 感染:まれに、インプラントの周囲に感染が起こることがあります。
- インプラント周囲炎:清掃が不十分だと、歯ぐきの炎症や骨の吸収が進むことがあります。
- 上部構造の破損・ゆるみ:噛む力が強い方では、歯や留め具が壊れたり、ゆるんだりすることがあります。
- 神経・血管の損傷:下あごでは、まれに神経の症状が残ることがあります。
- 骨の吸収:長い年月のうちに、インプラントの周囲の骨が減ることがあります。
- 喫煙・全身疾患:喫煙習慣のある方、糖尿病などの全身疾患をお持ちの方は、治りが遅くなる、または治療が受けられない場合があります。
- 骨粗しょう症のお薬:ビスフォスフォネート系などのお薬を飲んでいる場合は、事前にお知らせください。かかりつけ医と連携します。
※ すべての方に同じ経過をお約束するものではありません。日々のお手入れと定期的なメインテナンスが欠かせません。
向いている方・向いていない方
正直にお伝えします
向いていると考えられる方
- 総入れ歯が合わず、食事や会話に困っている
- 入れ歯の作り直しを繰り返している
- ある程度の骨が残っている
- 外科手術を受けられる全身状態で、定期的に通院できる
- 毎日のお手入れを続けられる
別の方法が合う場合もある方
- 骨が大きくやせている(骨を増やす処置が必要になることがあります)
- 持病のコントロールが十分でない
- 喫煙習慣がある
- 通院が難しい、お手入れが難しい
- ご予算が合わない
こうした場合でも、入れ歯の作り直しや調整で改善できることがあります。また、一部だけをインプラントにする方法など、別の選択肢をご提案できる場合もあります。無理にインプラントをおすすめすることはありません。
治療の流れ
ご相談からメインテナンスまで
STEP1
ご相談(保険診療)
お困りのこと、今の入れ歯の状態、持病やお薬についてうかがいます。入れ歯の作り直しも含めて、選択肢をご説明します。
STEP2
検査・診断
CT撮影と口腔内スキャンで、骨の量・形、神経や血管、上顎洞の位置を確認します。11,000円(税込)。
STEP3
治療計画のご説明
本数、費用、期間、リスクを治療計画書にまとめてご説明します。22,000円(税込)。ご納得いただいてから先に進みます。
STEP4
手術
局所麻酔で行います。片あごずつ行う場合は、もう片方と時期をずらします。骨を増やす処置は、この前後に行うことがあります。
STEP5
仮の歯
条件が合う場合は、手術の当日に仮の歯をお入れします。骨と結合するまでの間、これを使って過ごします。
STEP6
最終的な歯
骨と結合したことを確認してから、最終的な歯に替えます。
STEP7
メインテナンス
定期的な清掃と検査を続けます。間隔は、お口の状態に合わせてご案内します。
よくあるご質問
歯が1本もないのですが、治療できますか?
歯が1本もない場合も、検討できる方法があります。骨の量や形をCTで確認したうえで、本数と位置を決めます。骨が足りない場合は、骨を増やす処置を組み合わせることがあります。
上あごが6本、下あごが4本なのはなぜですか?
日本口腔インプラント学会の指針では、歯がない状態の上部構造は、上あごで4〜6本以上、下あごの固定性ブリッジで4〜6本以上、取り外せるタイプで2本以上とされています。当院では、上あごは骨が柔らかく上顎洞が近いことを踏まえて6本、下あごは骨が硬く広い範囲で支えられるため4本を基本にしています。骨の状態によっては、本数を増やすことがあります。
全部の歯を抜かないといけませんか?
残せる歯は残すことを考えます。残っている歯の状態によって、一部だけをインプラントにする方法や、残った歯と組み合わせる方法もあります。検査のうえでご説明します。
その日のうちに歯が入りますか?
骨の状態や噛み合わせの条件が合う場合には、手術の当日に仮の歯をお入れできることがあります。すべての方に同じようにできるわけではありません。条件によっては、骨と結合するまで待つ必要があります。
費用はどのくらいかかりますか?
片あごか両あごか、本数、取り外せるタイプか固定式か、骨を増やす処置が必要かで変わります。検査のあとに、治療計画書で総額をお示しします。ステップごとのお支払いで、現金のほか各種クレジットカード、デンタルローンがご利用いただけます。
保険は使えますか?
インプラント治療は自由診療です。ただし、ご相談と検査の一部は保険診療の対象になります(初診料、必要に応じてパノラマX線撮影など)。入れ歯の作り直しは、保険診療の範囲でできる場合があります。
高齢でも治療できますか?
年齢だけで判断することはありません。全身の健康状態、お薬、手術に耐えられるか、通院やお手入れを続けられるかを確認して判断します。かかりつけ医と連携が必要な場合もあります。
他院で入れた入れ歯でも相談できますか?
ご相談いただけます。今の入れ歯の状態を確認し、作り直しで対応できるか、インプラントが必要かをご説明します。
※ 治療内容・期間・費用は患者様おひとりずつ異なります。手術後に腫れや痛みを生じる場合があります。喫煙習慣のある方、糖尿病などの全身疾患をお持ちの方は、治療が受けられない、またはリスクが高まる場合があります。インプラントは一生持つことを保証するものではなく、日々のお手入れと定期的なメインテナンスが欠かせません。
このページの監修
山羽 徹医療法人山羽歯科医院 院長
- 日本口腔インプラント学会 認定専門医(登録番号 第1120号)
- 大阪大学大学院歯学研究科 非常勤講師/博士(歯学)
- 1999年からインプラント治療に取り組む